一般社団法人日本リサーチ総合研究所

本調査は、日本自転車振興会、会員社ほか多くの企業・団体のご賛同を得て達成された「産業社会基金」の果実によって実施しています。

2000年9月11日
平成11年度
産業社会基金事業
消費構造変動調査

現代消費者の意識と態度

本調査報告書は、個人(家計)消費に影響を与える要因として、所得や家計のゆとり感(ポテンシャル要因)、将来の生活への期待や確信(コンフィデンス要因)、価値観やライフスタイルを背景とした消費態度(マインド要因)という3つの要因に焦点をあて、99年12月に実施した全国ベースの個人意識調査の結果をもとに、可能な限り90年代の変化をあとづけながら、消費者の意識面からこれらを分析したものである。
とりわけ、個人消費を中心とした民需の自律的回復が期待される中で、ミクロ的視点でみた消費者行動、消費スタイルが、はたして’80年代からバブル期にかけてみられた姿にもどるのか、それとも現在みられるような厳しい消費態度が今後も続くのか、という問題意識にもとづき、きたるべき21世紀の消費市場に少なからず影響を与えると考えられる特徴的な消費態度の分析に焦点をあてている。

本報告書では、家計のゆとり感の大幅な低下や将来不安などポテンシャル要因およびコンフィデンス要因の影響を強く受け、家計防衛的な消費態度が強まっていることが確認されるとともに、マインド要因の側面からみると、現在、すでに兆候として表れているような新しい価値観やライフスタイルに支えられた厳しい選別的消費態度が、今後、ますます強まっていく可能性が高いことが確認された。

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第1部 家計の消費支出とゆとりをめぐる消費者の意識

1章 家計の消費支出をめぐる意識

1.抑制的、防衛的な意識が強かった90年代末の家計の消費支出見通し

総務庁家計調査(全世帯)でも、家計の実質消費支出が、7年連続で減少するなど、90年代末の消費は長期低迷状態にあった。意識面からみても、今後1年間の消費支出について、「増加又は充実」の意向を持つ消費者の割合が1割台にとどまる一方、「減少または節約」の意向を持つ消費者は全体の4割強を占め、支出抑制的、家計防衛的な意識が強かったことがわかる。こうした意識の背景には、所得の伸び悩みが大きく影響していた(図表1)。

図表1 今後1年間の消費支出全体の見通し


2章 家計のゆとりをめぐる意識

1.ポテンシャル要因をめぐる消費者の意識

所得は低迷していても、現在の日本では、日常生活では経済的な不自由さを感じていない人、あるいは消費を我慢している状況にはない人の方がかなり多い。また、不時の出費の備えがある人も多い。しかし、そうした人の割合は90年代初めの頃よりいずれも大きく減少している(図表2〜4)。

図表2 ぜいたくをいわない限り日常生活でお金に困ることはない

図表3 家具や耐久財はひととおり揃っており、特に購入を我慢しているものはない

図表4 家族の病気など不時の出費の備えがある

※92年と99年の比較図表については、両調査に共通の20〜69歳サンプルの集計値

2.コンフィデンス要因をめぐる消費者の意識

(1)老後のためのストック(生活資金や医療・介護のための費用等)ができている人は多くない。特に、“老後”というライフステージに近づいている50〜60代においても「備えができていない」という人が比較的多い。また、こうした中高年層では、先行きの収入減少や失業の不安を抱えている人が多い(図表5〜8)。

図表5 自分又は自分の親の老後の生活資金は大体蓄えられている

図表6 自分又は自分の親の老後の医療や介護のための蓄えは大体できている

図表7 これから先自分や家族の収入が減る心配がある

図表8 これから先自分や家族の失業や仕事の継続に不安がある

(2)一方、少子化が進む中で、子供の数は減少しているが、30〜40代の子育て世代では、老後の不安より、子供の養教育負担の増加に不安を持つ人が多い(図表9)。

図表9 これから先子供の養・教育費の負担が大きくなる心配がある

(3)消費者が、将来不安から消費を抑制し貯蓄を増やす行動をとる姿は、直接的にはみえてこなかった。しかしながら、将来不安から消費を抑制し貯蓄を増やす行動をとる消費者が少ないとは必ずしもいえず、高所得・高額貯蓄層ではそうした行動をとる余裕があるのに対し、低所得層等では、将来不安はあっても、そうした行動をとる余裕がもてない様子がうかがえる。従って、現在の消費低迷には、所得(ポテンシャル)要因の影響が強く、これが将来不安(コンフィデンス)要因の影響を覆い隠しているようにみえる(図10)。

図10 支出をできるだけ節約し、収入から貯蓄にまわす分をなるべく多くしている


3.ゆとり尺度でみた家計のゆとり感は90年代末に大きく低下した

消費者個人の意識の内面にあるゆとり感は、所得水準だけではなく、ストックの状況やそれぞれの人の生活スタイルによっても左右される。消費者が家計(自分)の経済状況および生活状況について自己評価した6つの項目への反応を得点集計した「家計のゆとり尺度」でみると、家計にゆとりのある層は90年代始めと比べて大きく減少している(図表11)。

図表11 家計のゆとり感(92年調査結果との比較)


第2部 現代消費者のマインド

3章 消費飽和や制約要因をめぐる意識

1.消費飽和感を持つ人の割合は、現段階では、消費全体を低迷させるほど、大きなモノではない。とはいえ、消費飽和感も無視できない割合で存在していることは事実である。また、「潜在需要」を持つ人はバブル期に比べると大きく減少しており、少子高齢化の進展等を背景に、消費飽和感の影響は相対的には強まっていると考えられる(図表12〜14)。

図表12 潜在需要と消費飽和をめぐる意識

図表13 潜在需要をめぐる意識の変化

図表14 年齢階級別にみた潜在需要と消費飽和をめぐる意識

2.供給制約(気に入るものがなかなかない)を感じている人は過半を占め、消費飽和感を持つ人の割合を上回る。また、空間制約から消費を我慢している人も少なからずいる(図表15〜16)。

図表15 気に入るものがなかなかないと思うことがよくある

図表16 置き場所に困るので買いたくても我慢することがよくある


4章 現代消費者の消費態度

1.「品質・性能等に自分自身が納得のいくもの」を選ぶ内部価値重視の【こだわり志向】を持つ人は全体の4割程度を占めており、単なる経済的な豊かさだけではなく、生活の豊かさを享受している層に比較的多くみられる。こうした内部価値重視の【こだわり志向】は、「伝統や本物と世間で呼ばれるもの」を選ぶ外部価値重視のこだわりを持つ人より多い(図表17〜18)。

図表17 銘柄や品質・性能に納得のいくものしか買わない

図表18 伝統のあるもの、元祖、本物と呼ばれるものを選ぶ方

2.【必要厳選(ジャストフィット)志向】も内部価値重視型の消費態度といえるが、消費者の2人に1人はこの消費態度を持っており、【多機能(マルチ)志向】を持つ人より多い(図表19〜20)。

図表19 自分に必要ない機能やサービスがついていると割安でも買わない方

図表20 家電等は多機能でいろいろな用途に幅広く使えそうなものを選ぶ方

3.コスト(値段)とパフォーマンス(品質・性能等)を秤にかけてよく吟味する【コスト・パフォーマンス・バランス志向】を持つ人は全体の6割を占めるが、【ほどほど志向】を持つ人は全体の7割とさらにこれを上回る。一見、【ほどほど志向】は経済的なゆとりのなさから生じる消極的な態度にもめるが、むしろ【コスト・パフォーマンス志向】に通じる積極的な態度に近いそうである(図表21〜22)。

図表21 買い物は品質や性能が価格に見合うかよく検討する方だ

図表22 買い物は手頃な値段でほどほどの品質・性能のものを選ぶ方

4.【進取志向】を持つ人は全体の2割強程度にとどまり、一方、“変化”に対して保守的な【安定志向】を持つ人が6割を占める。年代でみると、若い年代ほど【進取志向】の態度は強まるものの、むしろ、若い年代でも、「新製品等はしばらく様子をみてから買う」という慎重な態度の方が強いようである(図表23〜25)。

図表23 新しい技術や素材を使った商品が出ると試してみたくなる方だ

図表24 新製品は評判等しばらく様子をみてから買う方だ

図表25 初めてのものより、使いなれた安心感のあるものを選ぶ方だ

5.【個性化志向】を持つ人は5割を超えており、【同化志向】を上回る。但し、これらは個人の意識の中で必ずしも矛盾してはいないようである。同質性を保ちつつ、その中で個性を打ち出そうとしている消費者の姿がうかがえる(図表26〜27)。

図表26 服装や持ち物や自分らしさが出るものを選ぶ方

図表27 服装や持ち物は周りの人と違ったものや目立つものは避ける方

6.【時間充実志向】を持つ人は【財・サービス充実志向】を持つ人の割合をやや上回る。また、【自己実現志向】を持つ人は【時間充実志向】を持つ人をさらに上回った。特に、生活にゆとりのある「豊かな生活層」では【自己実現志向】を持つ人が5割を占めている(図表28〜30)。

図表28 モノやサービスの買い揃えを充実させたい方

図表29 趣味やボランティア等に費やす時間を充実させたい方だ

図表30 自分や家族の個性や教養を高めることにお金を使う方

図表30 自分や家族の個性や教養を高めることにお金を使う方

以上のように、【こだわり志向】【必要厳選(ジャストフィット)志向】【コスト・パフォーマンス・バランス志向】【ほどほど志向】など、消費者自身の内面にある価値観やそれに基づいた選択基準に従って、厳しい目で選択する消費態度を持つ消費者はかなりいる。こうした消費態度が、結果的に、消費の伸び悩みという形であらわれている可能性もある。

さらに、今回の結果からは、高度成長期以来の消費のパラダイムともいえる、“新しさ”や“変化”という刺激によって潜在的な消費需要が刺激され、それが消費に結びついていくような活発な大量消費時代の消費態度より、変化が少なく、落ち着きのある、いわば成熟した消費態度が強いことや、財・サービスの充実だけでなく、時間の充実や教養・個性を高める自己実現といった高次化段階にある消費態度が少なからず存在しており、消費態度は、内面的価値観を重視する成熟段階に入りつつあることが確認された。

景気が回復し、所得面での制約が小さくなったとしても、こうした消費態度が消費者の中から消失することはないだろう。むしろ、厳しい選別的態度や消費生活の高次化を志向する態度が、生活の豊かさを享受している層との相関の強い点を考えると、生活のゆとりが豊かさの回復とともに、むしろ全体としては、さらにこうした態度が強まっていくこともじゅうぶんに予想される。